2019年8月に行われたワシントン条約会議で、コツメカワウソやトッケイヤモリ、インドホシガメ、パンケーキガメなどがCITES(サイテス)入りしましたね。
でも、このサイテスって一体何なんでしょう?
そして、サイテスの附属書Ⅰや附属書Ⅱ、附属書Ⅲに入ったからといって何がどう変わるんでしょう?
こちらのページでは、CITES(ワシントン条約)がよー分からん!!
って人向けに、CITES入りした動物や植物がどのように扱われるのか。また、すでに飼育していたり、持っていたりする動物や植物はどのように対処するのかなどについてまとめておきます。
サイテスのことを知らないと最悪の場合、罰則で懲役刑を受けてることにもなりますので最後までお付き合いください。
CITES(ワシントン条約)とは?
まずはサイテス(CITES)について、サクッと知っときましょう。
CITESとは、Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Floraの頭文字のことです。日本語に訳すると「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」です。
1973年3月3日に初めて採択されたのがアメリカ合衆国のワシントンD.C.だったことから、別名ワシントン条約と言われています。
この国際条約を世界で結んでいる目的は、自然のかけがえのない一部をなす野生動植物の一定の種が過度に国際取引に利用されることの無いように、その種を保護するためです。
つまりCITESとは、国際的な動植物の保護条約だと覚えておいて下さい。
このCITESがあるおかげで、絶滅の危機にひんしていたり、瀕するかもしれない動植物の国際的な取引を規制し保護することができます。
CITESの分類
CITESには付属書Ⅰ、Ⅱ、Ⅲというランクがあります。
そして、このⅠ、Ⅱ、Ⅲには合計約30,000種の動物を取引制限の対象としています。
Ⅰが一番厳しい規制で、Ⅲが一番軽い規制です。また、CITESに入っていない動植物は規制の対象外なので、CITESの規制の対象にはなりません。
附属書Ⅰ:商業目的の国際取引が禁止
附属書Ⅱ:商業目的の取引は可能。種にとって有害でないことを輸出国が証明し許可することが条件。
附属書Ⅲ:商業目的の取引は可能。ただし輸出許可書が必要
となってます。
それでは、付属書Ⅰ、Ⅱ、Ⅲにはどのような規制があるのでしょうか?
その対象と規制をまとめてみました。
附属書I
絶滅のおそれがある種で、取引によって影響を受けるか受けるおそれがあるものが対象になります。
付属書Ⅰに入っている種は、商業的な国際取引が原則禁止となります。一部、商業目的でない、個人利用や学術的目的、教育・研修、飼育繁殖事業であれば許可がおりることがあります。
基本的に国際取引の際には、各国の輸出許可書や輸入許可書が必要となります。国内で繁殖した個体やすでに飼育している生体などにも対処が必要となりますが、それに関しては下で説明致しますね。
ジャイアントパンダやウミガメ、トラ、ゴリラ、ヨウム、センザンコウなどおよそ1,000種が対象です。
詳細な種のリストに関して、学術名が分かる場合はこちら。それ以外は動物、植物から確認できます。
附属書II
必ずしも絶滅のおそれがある種では無いが、その種やその種からとれる材料が違法な手段で捕獲、採取、取引が行われるのを規制するものが対象になります。
輸出国の許可を得れば商業的な取引は可能です。
ですが、輸出国の輸出許可証(その個体が適法に捕獲・伐採されたものだと認める)が必要になります。
そのため附属書IIの対象になると、取引の際に密輸でないことを証明するために輸出許可証が重要になります。
実際、この輸出証明書がなかなか出ないため、WC(野生の種を捕獲したもの)はなかなか輸入できなくなります。
マホガニーやサメ類、ライオン、タツノオトシゴ、サボテン、ラン、ローズウッドなど約34,600種が掲載されています。
附属書III
世界的な絶滅のおそれは少ないけど、その地域内で絶滅する恐れがある種がこれに当たります。商業的な目的のための国際取引の制限の協力を求める種に適応されます。
つまり、自分の国で制限かけるから、周りの国のみんなも規制に協力してねって考え方です。
付属書Ⅲに入ると、輸出国の輸出許可書または原産地証明書などが必要になります。
附属書Ⅲだけが、会議での採択は不要で、指定国が条約事務局に通知するだけで掲載することができます。
カナダのセイウチや、中国の宝石サンゴなど、地域ごとに約220種が対象となります。
CITES附属書Ⅰに入った場合の対処方法
飼っているペットや植物がCITESのappendixⅠ(附属書Ⅰ)に入った場合の対処方法についてです。
CITESの附属書2や3に入っても、国内で飼育している個体は対処する必要はありません。ただし、すでに飼っている動物がCITESの附属書Ⅰに入った場合は、個体ごとの国への登録が必要になる場合があります。
国への登録が必要になるのは、
- 個体を譲渡・売買する予定の場合
- いま飼っている生体を繁殖予定の場合
です。
自分が責任を持って、その生体が死ぬまで飼育する場合は登録は不要です。ただ実質的には、自分がいつ死ぬかわかりませんし、自分が病気になって譲ったりすることがあるかと思います。
そのため、終生飼育を予定していても、国への登録をしておくのが無難かと思います。
登録とは?
CITESの附属書Ⅰに記載された種を国内で売買・譲渡・繁殖などする場合、個体ごとに登録が必要となります。
この登録とは、環境省の自然環境研究センターが行うものです。必要書類を提出して受理されると登録票を発行してもらえます。
この登録書があれば、国内でも売買や譲渡、繁殖できるようになるわけです。
登録に必要な書類
登録には1個体ごとに以下の書類の提出が必要になります。その書類がこちら
- 国際希少野生動植物種(個体及び個体の加工品)登録申請書(pdf)への記入
- 登録する生体のカラー写真
- 取得経緯の自己申告書への記入
- 取得経緯の裏付けとなる書類
- マイクロチップ識別番号証明書 脚環識別番号証明書
です。(国内において規制適用日前に取得された個体等の申請方法を参考に記載しております。)
書類の準備ですが、
1、2、3に関しては、書類に記載したり写真を印刷したりするだけなので問題ないかと思います。
5のマイクロチップ識別番号書などは爬虫類ではほぼ必要になります。獣医で1万円程度かかりますが、マイクロチップ手術をすれば手に入るので、こちらもまだ入手可能です。
最後に4が問題になります。
取得経緯の裏付けとなる書類とは、登録申請個体等が規制適用前に日本に輸入された際の通関書類等規制適用日前に所有していたことを証する原則として公的機関の発行した書類が必要になります。
つまり、ショップから購入した生体なら、ショップから貰う販売証明書や取得当時の領収書、申請者が自身で輸入した場合は通関書類などが必要になります。
なので、生体販売証明書を持っておけばOKです。
これだけならいいんですが、新しくCITESの附属書Ⅰに入る種が前から附属書Ⅱに入っていた場合は、輸出国からのCITES2 export permitと経済産業省の輸入承認の書類が必要になります。
今回の場合だと、リクガメ系のインドホシガメやパンケーキガメですね。
ここで問題になってくるのが、ショップが正規ルートでその生体を輸入していたかどうかです。正規ルートで販売されていた個体ならなんの問題もないんですが、正規ルート以外で密輸された生体を扱っていたり、密輸された知らずに買取を行い販売したりと、残念ながら色々なパターンがあるかと思います。
その場合、輸出許可や輸入許可証は無いため、その生体は登録することができません。
そうなると、売買・譲渡・繁殖ができなくなり、終生飼育することとなります。
ブリードをしている人など、親となる生体の両方の登録がないと繁殖個体も登録できず、売買や譲渡、繁殖ができなくなります。しかも、罰則を受けることになるのはいま所有している人です。
こうなったらどうしようもありません。
ショップ側と話し合うか、生体を終生飼育するか、法律が施行される前に手放すか。
のどれかを選ぶことになります。
今回の件に関しては問題になりそうなので、詳細に関しては生体を登録する環境省の自然環境研究センターが出してくるかと思います。そちらを確認して登録を行いましょう。
罰則
ワシントン条約そのものには罰則規定はありません。
ただし、各加盟国が独自に条約運用のための法整備を行っており、日本では絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)があります。
そのため、ワシントン条約に違反して野生生物を日本国内に持ち込むと、たとえ違反していることを知らなかった場合でも罪になります。また、国内でCITESの附属書Ⅰに入る登録されていない個体を売買や譲渡しても罰則の対象になります。
違反内容 | 個人 | 法人 |
譲渡,捕獲,輸入,輸出 | 5年以下の懲役又は500万円以下の罰金 | 1億円以下の罰金 |
陳列,広告 | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 | 2,000万円以下の罰金 |
法律違反をすると重い罰則が下ります。くれぐれも罰則を受けるようなことはしないようにしましょう。
繁殖する場合
CITES附属書Ⅰの種を繁殖する場合は、両親ともに登録されている必要があります。
先程説明したように、親の登録には法律が施行される前から飼育し、合法的に取得した生体であることを証明する必要があります。
その際、生体購入時の販売証明書を持っているかどうかです。これを持っていれば締結前に購入していたかどうかがわかります。また、持っていないか貰っていない場合は、購入した店舗にといあわせてみましょう。
それでも販売証明書がなければ確実に通る方法ではありませんが、法律が施行されるまでに獣医に行って診断やレントゲンを撮ってもらうと良いです。診断書が施工前にあれば、日本で飼われていた証明の一部にはなります。
また、附属書2に入っていた種に関しては、輸入許可証などの登録申請個体等が規制適用前に日本に輸入された際の通関書類等規制適用日前に所有していたことを証する原則として公的機関の発行した書類が必要になります。
必ず両親の登録を行っておきましょう。
そして子供の生体を売買や譲渡、繁殖等行う場合にも登録票が必要になります。
子供の生体を登録する際には、繁殖証明書が必要になります。その際、両親ともの登録票のコピーが必要なため、両親ともに登録されている必要があります。
もちろん、販売等する際には登録が必要で、マイクロチップの埋め込みも必要です。
子供に関しても、飼いきれなくなったときの保険で登録とマイクロチップは必用です。
マイクロチップはベビーでは入れれないので、育ってから入れることになります。ただし、マイクロチップが入っていない間は販売できません。
また、CITESⅠは親が登録されていない場合、親から子が生まれても登録できず、世の中に出回らない子になります。必ず親の登録は行いましょう。
最後に
こちらのページでは、分かりづらいCITESとその対応についてまとめてみました。
法律の施行は、CITES入りが決定してから6ヶ月後です。それまでは今まで通りの対応となります。
なので、現状販売されている生体は、CITES入りが決まってから6ヶ月以内に購入して、法律施工行後に環境省に登録すればOKです。
今回の場合は、2月末までがラストチャンスです。
インドホシガメやパンケーキガメがほしいなと思っていた方は、正規ルートで輸入している業者やショップから購入して登録すればCITESⅠ入りのあとでも飼育できますよ。
レア度が上がって、値段も上がっているかもしれませんが、いまを逃すとなかなか手に入りにくくなるので、検討してみて下さい。
参考ページ:WWFジャパン ワシントン条約(CITES)について
参考ページ:経済産業省 知っていますか?ワシントン条約
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